ジョイントベンチャーにより強力な販路を築いたネットスーパー会社
2000年、マッキンゼー・アンド・カンパニー出身の高島宏平社長により設立された同社。2011年の原子力発電所事故後に食の安全への関心が高まったことで会員数を伸ばし、現時点(2019年6月)で、グループ合計の会員数は30万人以上を突破している。安全な有機野菜を届けるために同社が行う取り組みとは。
地域の牛乳販売店と業務提携を行い販売力を強化
玄関まで新鮮な野菜を届けてくれる宅配サービス「Oisix」を運営する同社は、牛乳販売店と業務提携を行い、その販路を一気に拡大し、業績を伸ばしたことで知られています。この店舗宅配事業は、2012年の時点で、酒販店などを含め全国で約1430店舗と取引、宅配チラシの配布も99万世帯を超えるまでに順調に拡大しました。次の年には、この取り組みにより築いた顧客に対してサービスを届けるeコマース事業に集中するため、店舗宅配事業は別会社に引き継いだといいます。
牛乳販売店との業務提携の仕組み
牛乳販売店が牛乳と一緒にオイシックス の商品を紹介するチラシを顧客宅へ配布します。そして、牛乳瓶の回収する際に、書き込んでもらった注文用紙を回収、注文を集計してオイシックスに発注します。それを受けてオイシックスが商品を牛乳販売店に届け、顧客宅にオイシックスの商品を配達してもらいます。牛乳の代金と、オイシックスの商品の代金を回収するという流れです。
このようなコラボレーションが実現したことで、オイシックスは「家庭への販路」と「顧客との直接の接点」を享受することができます。一方で牛乳販売店は、すでに衰退期に入りつつある業界にあります。顧客数、客単価、購買頻度の低下も業界の大きな課題です。そこで、オイシックスの生鮮品を新商品として投入することで、客離れの防止・客単価アップ・休眠顧客の掘り起こしなどができるようになります。
つまりは、牛乳販売店の「商品を販売する力」とオイシックスの「商品自体の力」が掛け合わされ、両社がWin-Winの条件を享受できたことがコラボレーション成功の要であったといえるでしょう。
適切なコラボレーションの相手を見つける
あなたの商品やサービスを購入する人が、その前後に取引をする人は誰か。あなたの商品やサービスの前後に買われるものがあるとすればそれは何でしょうか。また、あなたの顧客が普段考えていることやお金と時間を使っているところはどこでしょうか。あなたが顧客の真のニーズを発見できたときにコラボレーションすべき相手は自ずと見えてくるでしょう。その際、業種やビジネスモデルが異なる意外性のあるコラボレーションであるほど、他に似たものがないため、ジョイントベンチャーは効果を発揮します。
互いの価値交換の方法を見極める
ジョイントベンチャーを行う双方が経営資源や価値を交換する理由は以下の7つのパターンがあります。
・ビックデータの共有
・共同企画・開発
・共同事業化
・共同マーケティング
・共同仕入れ
・事業カテゴリー拡大
・事業エリアの拡大
ここでは全てを解説することはできませんが、お互いのニーズと経営資源の洗い出しができれば、ジョイントベンチャーを実現するための最善の方法を見つけることが大切であるといえるでしょう。今回のオイシックスと牛乳販売店の事例のように、Win-Winの状態を築くことができて初めて、ジョイントベンチャーは成功したといえるのではないでしょうか。
オイシックス・ラ・大地株式会社
有機・無添加食品、ミールキットの通信販売を行う会社。ウェブサイト「Oisix」やカタログ「大地を守る会」による一般消費者への有機野菜、特別栽培農産物、無添加加工食品等、安全性に配慮した食品・食材の販売を行っている。
【出典】Wikipedia
ジョイントベンチャーによる顧客創造とは?
ジョイントベンチャーの本質は資産のニーズの交換することによって新たな顧客を創造することにあります。
ドラッカーは企業の目的の定義は「顧客の創造」であるとしました。
今回の特集について、どんな資産とニーズの交換が行われ、どんな顧客創造が行われたのでしょうか。
本特集のジョイントベンチャーで行われた顧客創造を分析したシートを事例集10とともにプレゼントしています。